形成的評価とは
このプログラムによって開発してきた研修テキストや規準表、研修カリキュラムなどとともに、研修を受講している過程で受講者が、「教員のICT 活用指導力」のどの部分を習得しているかを把握できるようなしくみを工夫することで、受講者自身が力がついたことを実感してもらえるような研修になるように検討してきています。また、どのような力が身についたのかを的確に自己評価できる力も、「教員のICT 活用指導力」の中に含まれているととらえています。
そこで、「~がわかった」というような受講して内容がわかったというレベルから、「~ができる」というようなICT を活用した授業が実践できる、そして、ICT を活用した授業によって児童生徒の学習に効果があった、という段階まで、研修の効果があったかどうかを、研修の講師をはじめ、受講者である教員自身も納得しながら進めていけるように、チェック項目を準備することで、形成的な評価を支援するようにしています。
チェック項目は、「教員のICT 活用指導力」に対応しており、教員自身がチェックする自己評価項目と、同僚の教員同士で相互に評価しあう相互評価項目と、研修を担当する講師が評価する講師評価項目、そして、長期的な視点にたって評価するOJT 評価項目に整理しています。しかし、このチェック項目が多量にあると受講者としてはそのチェック活動そのものが負担と感じ、研修成果を低下させる要因になると考え、適切なチェック分量の見極めとともに、受講者が負担と感じないような手法でチェックできるような方法の構築に努めました。
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研修テキストの自己チェック欄
研修テキストには、左右の余白部分に、そこまでの内容を自己チェックして振り返ることができるように、要所要所で吹き出しを設けています。受講中に、この吹き出しに印をつけていくことで、そこまで学習した内容を確認できるようにしてあります。講師の方は、この吹き出しをうまく使って、研修の成果を確かめながら進めていくようにお使いください。
知識・理解的な要素の理解度を確認するための、Web 確認テスト
研修テキストに対応して、そこで理解してほしい用語などの知識・理解的な内容ごとに、自動採点型のWeb 確認テストを準備しています。テストは、簡単な一問一答式の○×型や、説明文に対応した用語を選ぶ選択肢型、簡単な操作スキルをチェックできるe-Testing 型などを準備し、受講者が受講後すぐに、学習した内容を振り返ることができるように準備しています。受講者は、このWeb 確認テストの結果を見て、自己チェックを行ってください。
また、このWeb 確認テストは、研修後にも繰り返し利用して頂くことで研修成果を把握することにも役立てることができます。
指導者(講師)からの評価
研修カリキュラムに合わせて、研修で取り扱う内容ごとに、研修テキストに対応した演習を準備しています(詳細はモデルカリキュラムをご覧ください)。この演習では、受講者が使う「受講者用ワークシート」と、模範解答例や、このワークシートのねらい、ワークシートの評価の視点が書き込まれている「講師用ワークシート」を用意してあり、講師の指導の手立てとして活用できるように準備してあります。
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演習を行った後で、受講者自身も講師に示された評価の視点で自己チェックを実施します。自己で確認しやすいわかりやすい評価の視点もありますが、例えば、模擬授業やワークショップ的な演習によっては、自身のチェックだけでは不安な部分もあると思います。また、研修テキストに盛り込めていないような各学校のソフトウェア類の整備状況や校内LAN の環境などに依存する部分や、その研修で講師が重要視したい内容など、講師によって評価して頂くことで適正なコメントが受講者に伝えられるものがあります。
このような自己評価だけでは不安な部分をサポートするために後述の相互評価というしくみ以外に、レポートなどの演習成果物や、活動全般を講師が見て評価する、講師評価というしくみを準備しています。
研修後、講師がこの講師評価をWeb サイトに登録することができます。それが登録されると、受講者は、この講師からの適切な評価と、自己の評価をWeb サイト上で同時に提示し比較することで、自己評価の適正化の一助になるように設計しています。研修成果をより確実なものとするために、ぜひ、この講師からの評価を元に自己評価を見直す機会を持ってください。
同僚(受講者同士)との相互評価
形成的評価の方法として、自己評価や講師評価の他に、同僚(受講者同士)による相互評価による方法があります。
相互評価は、自己評価と比較した場合、他者の目を通すことで自らの能力をより客観的に評価することができます。また、複数の他者を評価することで、他者を評価することを学ぶことができるとともに、評価すること自体や他者が自分に対して行った評価結果を見ることが、自らのもつ能力やこれまでの取り組みを見直す機会となり、自己へのフィードバックにつなげることができます。
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相互評価においては、最終的には自己が他者の行った評価に納得することで、その効果が期待できることから、評価される者が納得できるような方法で相互評価を実施する必要があります。また、評価される者が、その結果を納得して受け入れるためには、評価の公平性の確保や評価の観点への同意が必要となります。
このため、研修テキストに準拠した形成的評価のための自己チェックリストが作成されており、その中で相互評価により能力を評価するチェック項目についての課題や評価を行うための視点が用意されています。
これらをもとに、相互評価の進め方や評価の視点を実施する先生方で共通理解したうえで、研修テキストを使った研修として、授業参観や模擬授業を実施することなどにより相互評価を実施するとよいでしょう。
【模擬授業による相互評価の実施方法例】
- ●模擬授業実施形態
マイクロティーチングによる実施 (もしくは、実践授業の観察) - ●評価の視点
課題に該当する部分の研修テキストに記述された内容 - ●模擬授業を実施するために必要な資料の例
・マイクロティーチングの進め方(解説資料=実施手順と注意点)
・相互評価シート (参観者用)
・リフレクションシート(授業者用)
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これまでに示してきた形成的評価の考え方や受講者自らが行う評価(自己評価)、指導者からの評価(講師評価)、同僚や受講者同士の評価(相互評価)の各方法を参考として評価活動を実施することによって、現時点で自分の身についている力やできていることを把握することができたと思います。その反面、自分の身についていない力やさまざまな課題点も同時に把握できたと思います。
研修テキストによる研修における形成的評価では、教員自身が自らの能力を把握し、現時点で自分に足りない能力を認識し、それを次の研修によって次々と獲得していくことを重視しています。
このため、Web サイトには、研修前に行う「事前チェックシート」と研修後に研修内容の理解度を確認するための「確認テスト」や、研修成果を確認するための「事後チェックシート」、さらには、研修テキストの中にはそれぞれのフェーズにおいて内容を確認するための「テキストチェック項目」が用意されています。そしてこれらにより、教員自身が自らの能力を把握するとともに、現時点で自分に足りない能力が何であるかを認識できるよう工夫されています。
ぜひ、これらのチェックシートやテスト、チェック項目を有効に活用して、研修によって身につけた能力を把握するとともに、自分にとっての新たな課題を見いだし、次に身につけるべき能力や、そのためには研修テキストのどの部分について研修すればよいかを認識し、継続してどんどん研修に取り組んでほしいと思います。
そうすることで、教員のICT 活用指導力に必要な能力はどんどん身についていくことになるとともに、それを具体的に実施するための指導法も、自らの枠だけではなく、講師評価や相互評価にともない提示されるさまざまなアイデアや有効な実践例などを通して、より洗練された有効な指導法として身につけることができるでしょう。
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