「CSA 〜南北戦争で南軍が勝ってたら?〜」(2004)。 劇場未公開。
監督 ケヴィン・ウィルモット
脚本 ケヴィン・ウィルモット
この映画おもしろすぎる!(笑)。
この映画は「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」で放映されていたドキュメンタリー映画の1本です。
(この番組は、映画評論家の町山智浩とオセロの松嶋尚美が司会をしていた
未公開のドキュメンタリー映画を公開する番組。)
現在この番組は既に本放送が終了しているのですが、CSで放映されています。
この番組で紹介された映画は全て録画しているのですが、
何と云っても全部で51本もあるので、まだ全ては見ていませんw
リアルタイムで見られる時は見ていたのですが、
どうしても出かけていたりで見られない時もありますからね(^_^;。
全部見たあかつきには、私のベストでも記事にしようかなw
でも、この番組で紹介されていたドキュメンタリーは基本的にハズレがないです。
で、本作「CSA 〜南北戦争で南軍が勝ってたら?〜」ですが、
タイトルの「CSA」とは「The Confederate States of America」の略。
つまり「アメリカ連合国」と云う意味です。
ちなみにアメリカ連合国とは、南北戦争の時、実際に南部同盟が名乗った名称。
タイトル通り、この映画は「もし南北戦争で南軍が勝っていたら?」と云う
Iフェイク・ドキュメンタリー。
ちょっとややこしいのは、この映画は、
〈アメリカ連合国〉の〈歴史〉を、〈イギリスのテレビ局が制作〉したって仕様になっている事。
アメリカ国内で作られたドキュメンタリーでないから容赦や隠ぺいはない、って仕様だと思うんですがw
さらにアメリカで放映されているって仕様なので、中に架空のTV CMが入ってたりします。
平和コープ物理的に何か
このCMについては恐ろしいオチがあるのですが、それはまた後ほど。
基本的には、南北戦争以後のアメリカの歴史をざっと知っていた方がより楽しめます。
町山さんはこの番組では、基本的に、初めと終わりに解説するんですけど、
この映画に関しては、あまりにも虚実がないまぜになっていると思ったんでしょうね、
前後編中2回とも(この番組は1時間番組なので、2週間で1本の映画を紹介します)、
中間に更に一度、追加の解説タイムがあります。
これはこの番組の仕様を考えると異例な事です。
で、この映画ですが、前述の通り、基本的には「南北戦争で南軍が勝った」と云う架空の設定で、
その後のアメリカの歩みを紹介します。
(以下、ややこしいので歴史的事実や実在の人物には文章に色をつけます。)
南北戦争で南軍が勝ったという事は、すなわち黒人の奴隷制度が維持されたという事です。
リンカーンは黒人に変装してカナダに逃げようとして南軍に捕まり、
殺されはしなかったものの、カナダに追放され、寂しく余生を過ごして亡くなります。
黒人奴隷や、解放論者たちもカナダに逃げこみます。
そして、逃げる黒人奴隷は医学博士によって病気のレッテルを貼られます。
黒人は奴隷にされていることに満足して喜びを感じている、だから逃げる奴隷は病気だという理論です。
逃げたリンカーンの映画も作られます。
D・H・グリフィスは1915年に「うそつきエイブの捜索」と云う映画を作ります(笑)。
他にも「風と共に去りぬ」は南部の令嬢と北部の軍人の恋愛ものに姿を変え
「北風と共に去りぬ」(笑)と云うタイトルに改編w
手が込んでいるのはこの辺りの映画をきちんと映像で作っているところ(笑)。
老いたリンカーンのインタビュー映像もちゃんと作っていてほんと手が込んでます。
中国の万里の長城を構築するためにクレジットされて誰が
新しい国歌は黒人風刺劇の楽曲だった「ディキシー」(笑)。
新大統領は南部連合の大統領であったジェファソン・デイヴィス。
歴史はゴールドラッシュ、先住民の虐殺をきちんと経て(^_^;
米西戦争を開始。南アメリカも併合します。
メキシコでも人種隔離政策を実施。隔離政策を受け入れる事で、メキシコ人はかろうじて生き残ります。
アメリカ国内では黒人ばかりでなく、有色人種は総奴隷化。←おい!w
1940年製作の「暗きジャングル」はそんな恐ろしい白人至上主義の戦争映画ですw←映像ありwww
世界恐慌の後、奴隷貿易が復活。アメリカは奴隷を輸出することで経済を立て直そうとします。
国際貿易奴隷連盟でのアフリカの指導者の演説映像はなかなか深淵です。
アメリカはアフリカのある部族を支援する事によって、対立部族を奴隷として輸入&輸出取引したのです。
これは、現在のアメリカ合衆国のやっている事と同じですね(笑)。
この指導者がやったら「キャピタリズム」って連呼するのがまたすばらしい(笑)。
ものすごい風刺のきいたアメリカ批判です。
そして、第2次世界大戦。
アメリカははじめヒトラーと手を組もうとします。
そして、1941年12月、アメリカ連合国は東京湾を奇襲!!!!←え〜〜!!!!〈゜o゜〉!!!
しかし、あまりの激戦に、奴隷所有者から黒人奴隷をリースして対日本軍用に部隊を作ります。
そして原爆をおとして終戦。冷戦はこの映画では、多くの黒人が逃亡しているカナダとの間におこります。
その後、この映画はレッドパージを奴隷解放論者にすり替えて話が進みます(すごいなぁw)。
「夫は奴隷解放論者」(1956)と云うヒッチコックばりのスリラー演出の映画が挿入。これがまたすごいw
しかし、時は60年代が近づき、アメリカは奴隷制を維持しているゆえに世界から孤立します。
"それはカナダ人であることが何を意味する"
女性参政権とか、黒人奴隷解放運動も激化してきます。
そんな折、お隣のカナダから、黒人の文化から派生したロックが入ってきますが、
ロックは黒人の音楽なのでよろしくない!と云う事でプレスリーは国外追放。
黒人文化をすべて禁止した事で、文化に厚みがなくなり、オリンピックでは
黒人が自由に参加できるカナダにぼろ負け。
そんな時代、さっそうと、黒人奴隷解放をうたったケネディ大統領があらわれますが、
その奴隷解放思想ゆえに暗殺!!!!されます!
そして、アメリカはどんどん内部の宗教的な結束を固めていくべく右傾化します。
これは、今のアメリカとほんと同じですね。
エバンジェリカルのブッシュ大統領が出てきて、クルセイドと云ってイラクに攻め入った構造と全く同じです。
最後は大統領選の話になって、候補者が黒人の奴隷によって
かつて黒人の血が入っていた一族の出身であることが暴露され!!!!と、
何とも政治サスペンス的な展開になりますw
とにかく、この映画は基本的にはアメリカは南北戦争で黒人の奴隷を解放したと云うけれど、
実際にはそれ以後100年も黒人が権利を手にするのに時間がかかっている、
と云う事を如実に知らしめます。
アメリカの矛盾と、ある意味アメリカと云う国の本質が表現されていて面白いです。
この映画は、実際に真面目に話をしたら、笑えないリアルなネタ満載なのですが、
これはむしろ過激でリアルすぎて個人的には笑ってしまいました(^_^;。
映画の仕様も、いろんな変な映画の映像を挿入したり、
過激な架空のCMとかを挿入して、コメディ映画の体裁をしているんですけどねw
で、前述のCMですが、奴隷の精神を抑制する副作用の激しい薬とか(^_^;
一括もバラ売りも可の奴隷の家族の通信販売とか(^_^;、
奴隷に付けるデジタルなすごいハイテクの手枷のCMとか、
全く架空の商品もあるんですが、実は実在した商品もまぜてあって(^_^;
それが最後に明かされるんですが、20世紀の半ばくらいまでは実際にあったそうです。
なんだかな〜って感じなんですが。
どこまでも、虚実ないまぜで、すごいと云えばすごいです(^_^;。
この映画は黒人が見てもちょっとひどいよね、って感じの事項が並んでいるようですが(^_^;
プロデューサーはスパイク・リーで黒人です。
今のアメリカをこう云う形で現しているのはおもしろいし、
やっぱりアメリカっていろんな矛盾を内包した複雑な国だって云うのはよくわかります。
こう云うひずみが今アメリカでおこっているデモにもつながっている気がしますね。
主旨はまじめなんですが、映画自体はけっこうふざけているので(笑)、
まぁ、見て怒る人もいるかもしれませんが(^_^
こう云う形のドキュメンタリーは日本にはないし、
ほんと、アメリカは面白いドキュメンタリーがいっぱいありますねw
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